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Channel: 『ぬけられます』 あちこち廓(くるわ)探索日誌
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新潟県 燕市201410

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職人の町は銭湯の町・路地裏の二枚鑑札・ロンドンロンドン喫茶のロンドン

北向きの高窓、織物工場のノコギリ屋根のものと同じ役目だと思われます。


 前々回の吉田から再びJR弥彦線に乗り換えて二駅、燕駅に到着です。新潟県のほぼ中央部に位置する燕市、ご存知の方も多いかと思いますが日本を代表する金属加工製品の一大生産地であります。特にステンレスを主とする洋食器生産は、全国シェアの9割以上を占めるほどだといいますから大したものです。この一大産業の礎となったのが和釘になります。江戸時代の初め、疲弊していた領民を救うため、三条城の代官大谷清兵衛の奨励で和釘鍛冶が始まったとされています。当時は各地で大火が頻発していましたので、復興のための和釘は引く手数多だったというわけです。燕は昔も今も職人の町だということですな。

 そんな職人の町に遊里が存在したのか・・・先に答えを言ってしまうと、無かったそうです。あ、これは前回の巻で出会った吉粂のご主人から聞いた話ですけどね。まあ、下調べの段階でもそれらしい情報などは見つけられなかったですし。想像になりますが、お隣の三条には結構な規模の遊里がありましたから、皆さんそっちに行かれていたのではないでしょうか。上記のことは下調べ段階では知らなかったこと、一応地図上で気になる一画をチェックしてありますので、とりあえずそこを探ってみましょうか。



驚いたのが駅前の光景、何にも無い・・・



気になる一画というのが駅の東、県道44号線を渡った先にある幸町。お手数ですが地図で確認してみてください。プチ吉原かと見紛うほど綺麗に区画された町割にメインストリートらしきものが見つかるはずです。昔の航空写真にもはっきりと写っているものですからてっきり此処かと・・・。しかし、あったのは住宅街の中にこんな古い町工場と思われる建物が点在しているだけでした。吉粂のご主人の話は正しかった?



思ったのですが、此処って昔の工業団地みたいな処だったのではないかと。そうじゃないとこの綺麗すぎる区画が説明できないんだよなあ。というわけで、始まって早々に目的を失ってしまった今回の探索ですが、これでオシマイとするわけにもいきませんので、ここからは気軽なお散歩探索とさせていただきます。



県道44号線に戻ると冒頭画像の建物が現れます。



たぶんコチラも町工場だったと思うのですが、もう使われていないみたい。雁木がありますね。人が通る通路部分まで上屋が跳ね出しているのが『造り込み雁木』、屋根だけが架かっているのが『落とし込み雁木』といいます。此処の場合、上屋が少し跳ね出していますので『半造り込み雁木』で宜しいかと。



お隣にあるのが玉川堂さん、文化13年(1816)創業という老舗の銅器の工房。正確には鎚起銅器と呼びます。銅の一枚板を木槌で叩き、やっとこで延ばし、焼き鈍しをし、色付けをして美しい器に仕上げます。その技術は国の登録無形文化財に指定され、ご主人は人間国宝でもあります。海外でも高く評価されているそうです。しかもこの建物も国の登録有形文化財、門を兼ねた雁木は大正期、奥の店舗は明治末期に建てられたものになります。



なんとこの日はお休み・・・まあ、伺ったところで買えるかわかりませんが(笑)お高いのでしょうね。お店のHP貼っておきます。ぐい呑がいいなあ、値段が表示されていないけど・・・。



裏通りに入りました。この門扉も職人の町ならでは・・・いや、違うか。



さらに分岐する路地へ・・・豊満なママさんでもいらっしゃるのでしょうかね。



路地を抜けるとまた別の裏通り、数軒の飲み屋さんが並んでおりました。



その並びの端にはカフェー風・・・というのはちょっと苦しいかな?草臥れ果てたモルタル欠き落とし風の外壁がいい感じ。



でも斜めに振られた入口脇には円窓があるのです。



コチラもたぶん町工場ではないかと。木目が浮き出た押縁下見板にウットリです。



駅前通りを渡って今度は西側へ・・・寿町の路地裏に入りました。



そこで桜湯なるお風呂屋さんを発見。しかし、様子が変だぞ。



寿町集会所・・・廃業されたようです。寿サロンの貼り紙、少しずらして貼って欲しかった。赤の鯉が見えまへんがな。



立派な煙突はそのままでした。



寿町の南には宮町、専養寺さんの本堂の鬼瓦、文字通りのド迫力です。



その先に町の目抜き通りに抜ける路地があります。



左は割烹かな?右のパチンコ屋は退役済みのようです。



割烹には風俗営業の鑑札、それも同じものが二つ。これぞ本当の二枚鑑札!?



宮町サンロード商店街なる目抜き通りに出ました。正面には小田湯さん、老人無料入浴日なる看板が出ていましたので現役かと思ったのですが、どうやら最近になって廃業されたようです。



小田湯さんからたった50m、今度は玉宅湯さんです。燕で唯一の現役銭湯らしいです。外観は素っ気無いですが、浴場には佐渡おけさのタイル絵があるそうです。レポには記していませんが、これら以外にも二軒の廃業銭湯を見かけました。これも職人の町ならではないかと・・・仕事で汗を流したら一風呂浴びたいですものね。個人的にはその後が気になるわけ(笑)やっぱり三条に繰り出したということなのでしょうか。



お米屋さんには円形の造作、鬼瓦は恵比寿さんのようです。



これは立派な商家、深い軒の出が見事です。関東だと出桁造りなのでしょうけど、この辺りだとせがい造りと呼んだほうがいいかもしれませんね。



なんと、モンゴルの怪人の出身地は此処燕なのですぞ。燕といっても正しくは前々回レポした旧吉田町なんですけどね。アンドレの足をへし折った怪人は、現在西新宿の居酒屋のマスターをしておられます。キラーって伸ばさないのは方言???



目抜き通りから分岐する路地には長屋風の呑ん兵衛横丁、此処はかなり歴史がありそう。



そのうちの一軒、企業戦士(カンパニーウォーリア)ってどうなんでしょう。仕事の愚痴ばかりになりそう(笑)



商店街は国道289号線にぶつかって終わっておりました。渡った先がちょっと気になる一画なのです。



左の鮮魚仕出しのつぎ新屋さん、半造り込み雁木上の戸袋は銅板の板金細工で仕上げられております。



ウーム、これは巧妙な罠だ(笑)入口脇には風俗営業の鑑札がありました。



通りを抜けると中心街の南を流れる信濃川の支流中ノ口川の土手に出ます。支流といっても本流並みの川幅があります。その土手に面しているのが初元旅館さん、入母屋破風の上には高欄風の手摺。一応ウェブでヒットしますが、現役かどうかは不明。裏に回ると屋根が半ば崩壊していたのが気になります。



土手から降りて再び中心街へ・・・やっぱりこれといったものは見つからず。前方に見える社は戸隠神社です。



戸隠神社の境内、玉垣の向こうには古びた長屋が残っておりました。



レトロな照明がいいね。



歩き疲れた・・・何処かで休憩したいのですが、この町、カフェはおろかコンビニさえも無いのです。これはちょっとした驚きの事実。ようやく見つけたのが喫茶のロンドンさん。ロンドンとくると『ロンドン、ロンドン、楽しいロンドン♪愉快なロンドン♪』が真っ先に頭に浮かんでしまう世代。外観もそれに近いようなレトロ感が素晴らしいのですが、中はもっと凄かった・・・。



これ、もう完全に『愉快な』のほうの内装そのものではありませんか(笑)しかも、テーブルのゲーム筐体がギャラガ88、懐かしすぎるぞ。こういうのって脱衣麻雀が多いのですが、あれって絶対勝てませんよね。



こういうお店にはコレがお似合いかと。最近はアルコールよりこういったお店を探すのがマイブームになっております。失敗すると悲惨ですけどね。今回は大正解というわけです。

吉粂のご主人の話は正しかったということにしておきましょうか。まあ、気軽なお散歩探索と考えればそれなりに楽しめた燕市の探索でした。以上で久しぶりの越後新潟シリーズはオシマイ、お付き合いありがとうございました。

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