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栃木県 足利市(再々訪編)201411 その2

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駐車場の片隅に、忘れ去られたような一画が残っておりました。


 『足利に遊びて、先づ当地の名物たる、機織工業の盛況を視察し、旅館に投ずるもの、若くは料理店に一酌を傾くるものは、普らく粋と不粋とを問はず、当市一流の花たる芸妓を呼びて、酒間の斡旋を為さしめざる可らず、其艶麗なる風姿と、玲瓏珠の如き嬌音に接せば、心情自ら和ぎて酒杯の加るを知らず、快感交々起りて忽ち佳境の人とならん、以て旅情を慰むべきなり・・・』

 以上は明治43年(1910)に発行された『足利案内』による花街の様子になります。難しい文章ですが、大いに盛況を呈していたということだけは分かるのではないでしょうか。この後ろに26軒の料亭の屋号が記されているのですが、なぜかその1で紹介した相州楼さんがないのです。しかし、その三年後の大正2年(1913)に発行された改訂版?には、旅館の項目に載っておりました。料亭26軒、それ以外にも旅館や料理店がたくさんあったようです。甲乙の両見番があり、200名内外の芸妓が活躍されていたそうです。甲乙とはおそらく芸妓の中での格付けみたいなものだと思われます。甲と乙では出入りできるお店の業種が定められていたそうです。例えばになりますが、甲は旅館と料理店までですが、乙になると披露宴や宴会、貸座敷でも営業できたといった感じ。まあ、これは自治体によって違っていると思いますが。

 肝心なのは遊廓、『足利案内』には遊廓という項目もあるのですが、そこに記されていた地名は『福居』、これにはちょっと拍子抜け。福居は東武伊勢崎線足利市駅の二つ手前に駅があります。足利の中心街から直線距離で3キロ以上も離れているわけ。お馴染『全国遊廓案内』にも記されている処なのですが、面影皆無で町並みもいまいちと聞き及び未だに訪れておりません。此処が足利の遊廓という位置づけだったのでしょうか。中心街周辺にそういった場所が存在しなかったのか・・・そうなると、これから向かう色街跡とされている界隈はいったい何だったのかということになってくるわけです。よくよく考えみると細い路地がクネクネって間違いなく遊廓じゃないですよね。個人的には戦後に形成された限りなく青っぽい場所というのを推したいと思います。そもそも本当に存在したのか、謎ばかりが深まる一画なのです。

註)初回と前回はコチラコチラ、先にご覧になったほうが分かりやすいかと。


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巴町に到着、東京から銭湯専門の大工呼んで建てたという花乃湯さんは健在。相変わらずの堂々とした佇まいが素晴らしいですなあ。此処には一度浸かってみたいと思っているのですが、うまくタイミングが合いません。先日、和歌山県を旅してきたのですが、小さな港町の超絶激シブ銭湯に探索の後浸かろうと思っていたら、地元の方から二ヶ月前に廃業したと聞き絶句・・・別の町では、現役色街近くのネオン看板が瞬いているはずの銭湯が真っ暗、此処も廃業かと思ったら定休日で呆然、普通木曜が定休日だなんて思わないでしょ・・・こんなのばっか。


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花乃湯さん脇の通りに入ると大谷石の蔵を従えた長竹質店さん。前にも言いましたが、銭湯に質屋、遊里に付き物物件が二つもあるわけです。


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反射が酷くて申し訳ない、ショーウィンドウに並んでいるのは質草でしょうか。フィルム時代のEOSに、今ではあまり見かけないタイプのヴィトンとグッチ、完全にバブルの頃で時が止まっているわけ。過去の逸品の中で一際輝きを放つのがトランペット・・・。


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こんな路地を抜けて並行する通りに抜けましょう。


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勝手に元料亭か元旅館ではないかと思っていた物件なのですが・・・


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よく見ると南側のコチラと同敷地だったわけ。平屋建ての洋館風に見えますが・・・


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コチラも以前紹介した既に退役済みと思われるお医者さん。二階があるように見えますが、ペラペラの壁に窓があるだけというオモロイ造りなのです。将来増築するつもりだったのかしら。


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脇道に戻ってこんな除虫菊?が咲き乱れる路地を行きますと、目的の雪輪町です。


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お茶漬の萩さんがある四つ角に出ました。盛り場モデル地区の看板、若干色褪せたでしょうか。


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萩さんに続く廃墟と化したお店、ゴミ溜めのようになっていたのですが、綺麗に片付けられておりました。変なイラスト、こんなのあったっけ?


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逆に荒廃が進んでいたのが、珍しい竹垣を象ったトタンと妖しげな出格子があるコチラ。向かいは二連ノコギリ屋根の織物工場があったのですが、なんと基礎工事の真っ最中。こんな奥まった処に何が建つのでしょう。


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萩さん処に戻ってはす向かいの更地を確認、此処は何も変わらず。嘗て此処には妖しげなしもた屋風の平屋建てがありました。ちゃんと撮影する前に無くなっちゃった。取り囲むバリケードにはまちづくり事業用地とあります。無くなった理由とは、この周辺一帯(雪輪町・巴町・家富町)で行われている土地区画整理事業によるものと思われます。住民の反対もありあまり進んではいないようですが、区画整理って気付くと一気に進んだりしますから油断は禁物、どんな力が働いたのかは分かりませんが・・・。かなり先だという雰囲気ではありますが、いずれこの妖しげな一画は消えてしまうかもしれません。興味のある方はお早めにどうぞ。


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路地を抜けると双子のような看板建築が・・・というのは前回までの感想、これまた事実は違っていたというわけ。


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双子の間に純和風の玄関があるのが分かるでしょうか。


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なんと双子は裏手のお宅と繋がっていたのです。相変わらず何処を見ているんでしょうね、お恥ずかしいかぎりです。


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花乃湯さんが面している通りに戻りました。ブリーズソレイユみたいな木製リブがカッコイイ博仁堂薬局さん。角の辺りに案内板が見えますが、それによりますと、足利藩藩主の戸田家の陣屋が雪輪町にあったとのこと・・・そんな場所が色街に!?ますます分からなくなってきた。


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博仁堂薬局さん脇の入口がいい感じ。框ドアには真鍮製の斜めハンドル、中央を絞ったカーテン、古い床屋さんやパーマ屋さんで時折見掛けますが、コレって名前あるんでしょうか。


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向かいの小さなお宅、シンプルモダンな玄関廻りの造りがお気に入り。


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次に向かったのが巴町と雪輪町の北側。此処も地図を眺めていて気付いた場所、妙に気になるゴチャゴチャとした一画があるわけです。


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市役所の裏手にバリケードに囲まれた足利赤十字病院、どうしちゃったのと思ったら移転していたのですね。その向かいの一段下がった処に数軒の古びたお宅、なんとも表現しようのない近寄りがたい雰囲気に足がこれ以上進みません。


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少し戻ってトンネル通りを渡るとなまはげなる看板、その手前も何かのお店だったようなのですが・・・


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ぶち抜いてガレージにしちゃったみたい。昭和な照明がそのまんま、ボトル棚?がうまい処にありましたな(笑)


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その先に押縁下見板の奥行きがある物件があります。向かいは砂利敷きの駐車場みたいなのですが、奥に何かの看板が見えたわけ。


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なんだろうと近寄ってみますと、それが冒頭画像のしおりさん。おや、もっと奥に回り込めそうですぞ。


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なんとコッチにもお店の痕跡が残っているではありませんか。小料理屋っぽい佇まいですな。


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その先にもすなっくピエロさんなるお店、よくもまあこんな処でとちょっと感心。


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扉の上には栃木県ではお馴染のカフェーの鑑札。


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路地を抜けるとこんな光景。どうやらお隣の更地にも似たようなお店があったような雰囲気。それにしてもどんよりとした曇り空が似合う一画ですなあ。


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場所は近くとだけ言っておきましょう。これまた細い細い路地の突当りにこんな光景が見えたわけ。


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あまりにもストレートすぎてクラクラしてきた・・・当り前のことですが、此処でバッグやシューズを扱っているわけではありませんぞ。


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奥を覗き込むとさらにクラクラ。誰だ、ポッチに悪戯したのは(笑)コチラにもカフェーの鑑札があるの分かるでしょうか。


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路地は突当りで直角に折れていました。その先にもお店がズラリ、地図で偶然見つけた場所ですが、色街跡とされる裏手にこんな昭和がプンプン匂う一画が残っておりました。

足利市の都市計画図を見ますと、今回の場所は国宝に指定された鑁阿寺の西側一帯になるのですが、東側も区画整理事業区域に指定されていることが判明。かなりの規模の事業ということになるわけです。いつまでこの昭和な光景を見ることができるのか、鑁阿寺と足利学校という観光の目玉があるだけに心配なのです。レポの中でも申しましたが、以上のような状況ですので、興味のある方はお早めにどうぞ。

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