ちょっと前に遊里読本ということで幾つかのカストリ雑誌なるものを紹介致しましたが、あれは書籍と言ってしまってもいいものか・・・UPした後ちょっと疑問に思ってしまったわけです。今回は一応ちゃんとした本ですぞ、漫画ですけどね。
紹介するのは、坂辺周一の『百人遊女』です。たまたま書店で『遊女』の文字を見かけて試しに1巻を購入・・・気付いたら全6巻が揃っておりました(笑)坂辺周一というと、ドラマ化もされた『ティッシュ。』が代表作になるでしょうか、ちょっとアブノーマルでエロティックなホラーサスペンス物を得意とされているようですが、この『百人遊女』はそれらとは全然違います。
舞台は吉原、日本橋人形町にあった『元』ではなく、現在も男たちのパラダイスとして君臨し続ける『新』のほう・・・だと思います。そのあたりのことの明記は無かったと記憶している、というか全部読み返すのが面倒なのでそう言っているだけなんですけどね。そんな日本最大規模と最上格式を誇った遊里、そこで繰り広げられる泡沫の色恋話の数々、はじまりはじまり〜。
遊廓というと、男女の嫉妬や裏切り、ドロドロの修羅場みたいなものばかり想像されるかもしれませんが、これは違います。基本、江戸っ子が喜びそうなお涙頂戴の純愛人情物語・・・登場する男のほとんどが遊女に入れあげるお人好しと、叶わぬ片想いに胸焦がす純情青年。それに対峙する遊女も様々な悩み抱えて登楼する男を慈愛で包み込む天女様と、本来の身分と惚れてしまった男との狭間で揺れ動く初心な女心みたいな・・・個人的にはもっとドロドロになってほしかったのですが(笑)全て一話完結、悲恋で終わることもあるのですが、何かしら救いがある終わり方になっております。これがちょっと爽やかすぎていて、私のようなひねくれた人間とっては気に入らないわけ(笑)
実際のところ、当時の遊廓での男女の関係はどういった感じだったのでしょうか。確かに歌舞伎、落語、講談、浮世絵などでこういった純愛物語があったという記録が残っているのも事実です。でも、大多数は一時の擬似恋愛に溺れ、彼女らの手練手管に骨抜きにされる・・・現代の性風俗と同じだったのではないでしょうか。まあ、現在はその手練手管自体が無くなりつつあるようですが・・・あ、そういった業界、私はよくわかりませんぞ(爆)
そういったのは抜きしても十分に読み応えのある一冊だと思います。何と言っても坂辺周一が描く女性が美しすぎます。特にぷっくりとした唇の表現が秀逸すぎる・・・こう見えましてもちょっぴり漫画を齧った人間です。やっぱりプロはすげ〜なあと改めて感心させられました。一方で残念だったのが背景・・・あっさりとした直線的な表現ばかりでつまらない。もっとこう、華美な装飾などを炸裂させてほしかった・・・。まあ、所詮は背景、主役は人物ですから致し方ないところなのでしょうけど。資料自体が少なかったということもあったのかもしれません。
もちろん場所が場所ですので、ちゃんと致してるシーンがございます。そういったのが苦手な方・・・は、いらっしゃらないと思いますが、一応(笑)物語の間には『吉原近道』という雑学辞典みたいなコラムも収録されておりますよ。この連休、暇を持て余しておられるようでしたら如何でしょうか。
最後に帯タタキの文章を記しておきます。
『現代(いま)を生きる女性に贈る『百粒の涙』
江戸時代―――享楽の世界と噂され、
浮世を離れた場所、吉原遊郭。
老若男女の垣根なく、純愛の海に溺れゆく。
百人いれば百通り、至極の愛がありました。』
エッ、コレ女性向けの物語だったの!?