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Channel: 『ぬけられます』 あちこち廓(くるわ)探索日誌
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新潟県 東蒲原郡阿賀町津川201410

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三大河川港ととんぼ発祥の町・歴史から抹殺された遊里・廃工場と思いきや

色づき始めた蔦が綺麗でした。


 五泉駅から再び磐越西線に乗り込み、阿賀野川沿いをノンビリ行くこと約40分で津川駅に到着です。元々は津川町でしたが、平成17年(2005)に周辺の鹿瀬町、上川村、三川村との合併により誕生した阿賀町によってその名は消え失せています。この町の歴史は相当古く、その由来は700年以上昔まで遡るそうです。蒲原郡小川庄にあった新善光寺がこの地に移ってきたのが貞治元年(1362)のこと、一緒に移転した民家によって自然発生的に町が形成されたようです。その後、町は会津藩の西の玄関口、脇を流れる阿賀野川の舟運、そして越後街道(会津街道)の宿場町として栄えていくことになります。しかし、明治になると磐越西線が開通し宿場が役目を終え、舟運も次第に衰退していくことになるわけ。現在の町はといえば、日本全国何処にでもありそうな田舎町といった様相でした。そんな町にも嘗て遊里がありました。

 『津川町遊廓 新潟県津川町にあつて、汽車なら磐越西線、津川駅へ下車する。貸座敷五軒、娼妓約三十五名位居る。』

 お馴染『全国遊廓案内』による津川の紹介になりますが、たったこれだけかよ・・・。これは困った、ネットでも大した情報は見つからないし。さらに困ったのが地図です。この町、グーグルマップでいくら拡大しても町の様子が判らない地域にありまして、いつも探索に使用しているゼンリンの地図でも同じなわけ。まあ、グーグルマップの元データはゼンリンのですので当然の結果なんですけどね。仕方ないので新旧の航空写真にも目を凝らしてみましたがやっぱり駄目。仕舞いには禁じ手であるストリートビューにも手を出してしまいましたが、裏通りまではカバーしておらず皆目検討つかないわけ。もうどうしようもないので、今回はいちばん町の様子が判る航空写真を出力して持参という異例の状況・・・こんなんで大丈夫かいな・・・。



町は阿賀野川の対岸にあります。川に架かるきりん橋からの光景、特徴的な岩峰は麒麟山、津川城址でもあります。阿賀野川は岬のように出っ張った山にぶつかって左に大きく蛇行しています。右は支流の常浪川、同じく右に見えるのが津川の中心街です。



とにかく空腹だったので美味しいお蕎麦で燃料補給して、再び町の入口に戻って探索開始です。近くにあるのが琴平清水なる湧水、道から突然湧き出しているように見える不思議なロケーション。後ろの石垣も歴史がありそうです。



河畔に行ってみるとこんな謎の構造物、新発田でのこともあって遺構かと・・・後に大間違いであることが判明するわけ。



その先に舟運時代の遺構が残っています。河川港跡、地元では新船戸と呼ばれています。津川の港は日本三大河川港の一つとされていたそうです。この先にももう一ヶ所大船戸という港跡があります。嘗ての隆盛が偲ばれますね。



河畔の崖上に建つのが狐の嫁入り屋敷。どういった理由かは判りませんが、麒麟山には頻繁に狐火が現れるんだそうです。古から狐火の列は狐の嫁入りとされていましたから、津川ではそれを再現したお祭り毎年開催しています。それの資料館みたいです。展示されていたこれはお祭りに使われる打ち掛けだと思います。幸運にも此処の係の方から遊廓の情報をお聞きすることができました。それについては後ほど・・・。



町中を貫く県道14号線に戻って東へ、たぶんこの通りが嘗ての越後街道だと思います。



敏達天皇9年(580)に摂津国から勧請されたと伝わる住吉神社。境内にあった石造の変わった社です。拝殿は別でもっと立派なのがあります。



その先に重厚な赤煉瓦の塀が現れます。豪商平田家屋敷跡・・・平田家は藩の御廻米問屋、舟運での交易、銅山の経営、味噌醤油の醸造、数千haに及ぶ林業などなど手広く商っていた豪商だったそうです。



そんなとんでもない豪商のお屋敷ですが、残っているのは塀だけなんですよね・・・。



木目が美しい板塀に囲まれたお宅、軽やかな造りの門がいいね。



津川では雁木のことを『とんぼ』と呼びます。なぜ『とんぼ』なのか、調べてもよく判らないのですが・・・。で、この津川、とんぼ(雁木)発祥の地なんだそうです。慶長15年(1610)に発生した津川大火の後、津川城主、岡半兵衛重政の命により造られたのが最初とされています。左の妻入の商家が蕎麦を頂いた塩屋橘さん、なかなかのものでしたよ。



失礼な言い方かもしれませんが、この町思っていたほど寂れていないのです。しかし、そんな家並みの中にもポツリポツリと廃屋が見られます。



お隣も廃屋、玄関がトタンで塞がれておりました。コチラはお医者さんっぽいですね。



近くに貼られていた案内図でこれから向かう遊廓跡についてご説明致します。横に走っているのが旧越後街道の県道14号線です。途中で鉤形に曲がっているのが判ると思います。その先で姥堂川が横切っているのですが、川の向こうからその先の原町交差点までの範囲(赤点線)に貸座敷があったそうです。街道沿いに並んでいたのか、はたまた一廓を成していたのか、そこまでは狐の嫁入り屋敷の方も判らないとのこと・・・とにかく行ってみましょう。



鉤形の通りの先に赤煉瓦の塀がありました。たぶん手前にある天保14年(1843)創業の老舗酒蔵、麒麟山酒造さんのものだと思います。さきほどの平田家のもそうでしたが、端部に柱型があるのです。同じようなものを幾つか見かけました。津川特有のものかもしれません。



空き家になっていると思われる店舗に並んでいた地元小学生の作品。子供にとっての狐のイメージって皆似たり寄ったりなんですね(笑)



姥堂川を渡るとその先が目的地。橋の袂に建つ本陣旅館さん、ストリートビューでも注目していましたぞ。でも、本陣という屋号が気になります。津川は宿場でもあったわけでして、それと何か関係があったのかもしれません。



通りのほうが高いので一階部分がめり込んじゃってる・・・かなり複雑な造りになっているみたい。一応ネットでヒットはしますがかなり荒れ気味、おそらく既に退役しているかと。



そのまま姥堂川沿いを行きますと高台に神明宮なる神様が鎮座しているのですが、参道がちょっと面白い状況。鳥居の手前にこんな橋、跨いでいるのは川ではなく道なのです。親柱に何も刻まれていませんでしたが、かなり歴史がありそう。



本陣旅館さんの裏にあるのが割烹緑地亭さん、航空写真でもコチラの入母屋の屋根が目立っておりました。屋根のサビサビ具合からしてかなり歴史があるんじゃないかと思ったのですが、ご覧のとおりかなり直されているようでして以前の姿が全く想像できません。



落雪によるものだと思いますがこんな酷い状態・・・店を閉めてからかなり時間が経過している様子。これが遺構なのでしょうか。



振り返ると放置プレイの庭木が生い茂る本陣旅館さんの裏側、戸袋の『藤』の字はどんな意味なのでしょうね。



辺りにはこんな空き地が点在しているのですが、あまり『跡』という感じがしないんだよなあ。狐の嫁入り屋敷の方によりますと、遊廓として機能していたのは戦前までだったようですのでそれが原因なのかもしれません。



旧街道から分岐するこんな路地の奥や裏通りを探ってみましたが、これぞといったものの発見には至りませんでした。



狐の嫁入り屋敷の方の話です。以前、町史を編纂する際、この遊廓のことを『恥ずかしい場所』ということで本には記さなかったそうです。まあ、これがお役所としての普通の反応なのだと思います。この遊廓、ある意味歴史から抹殺された遊里と言えるのかもしれませんね。



駅に戻る途中、お宅の間の奥でひっそりと佇む廃墟に目が止まりました。行きのときも気付いてはいたのですが、工場か倉庫の廃墟かと思いスルーしていたのです。しかし、改めて見ると妙な感じ・・・・もうお気付きですよね?そう、右下の水色の部分です。



コレ、間違いなくモギリの窓口ではありませんか!!廃工場かと思いきや、なんと廃映画館だったというわけ。モギリの廻りは綺麗にモザイクタイルが貼られているのに、他の部分は全面トタン張り・・・変てこな造りですな。奥の客席部分は完全に倒壊しておりかなり危険な状態です。間違ってもこれ以上絶対接近しないように、忠告しましたぞ。昭和三十年代初め東蒲原郡には電工会館と津川東亜劇場という二館の映画館があったそうです。



駅に戻ってきましたが、次の列車まで30分以上・・・ベンチでぼんやりと形の良い山を眺めておりました。この津川駅、周辺に人家が少ないのでちょっとした秘境駅といった感じなのです。委託のようですが駅員はいますけどね。



やってきたのは国鉄色!?・・・で合っています???降り立ったのは女子高生が一人、乗り込むのも私一人・・・。

以上で情報が極めて少ない津川の探索はオシマイ、あそこって本当に遊廓跡だったのでしょうか。未だに半信半疑というのが正直なところ。まだ陽は高いのですがこの日はこれで打ち止め。今日はこのまま新潟市に出て毎回恒例の精進落し、相変わらず何を落とすのか本人もよく判っていないのですが(笑)一説によりますと、落とすのは金と運だけとか(爆)古町芸者を呼んでパーッと・・・なんてできるわけないので、慎ましく庶民に相応しい処で妥協しようかと・・・ではまた明日。

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